- a yellow balloon adrift with the current -
...... 文・写真 坪内隆直
昨週は春の陽気の感じられるブランズハッチで、この気候とは全く裏腹に、1年分のアン・ラックが全て襲いかかってきたように気の毒だった清成選手を取材していました。
「漂える黄色いバルーン」再開に清成選手の表彰台でもと目論んでいたのですが・・・・。
しかし、インターネットで今日のBSB第2戦スラクストン大会の結果を見れば、3位と2位で、ランキングも同点3位と、漸く普通になりつつあるようです。まずは一安心と言うところですね。
<<続きを隠す今僕は、バルセロナ郊外のホテルで、この原稿を書いています。
前回の「漂える黄色いバルーン=4」に登場した少年は、MFJの推薦を受け、MotoGPアカデミーを受験、見事パスしたものの、全日本とのダブル・エントリーとなり、マシンは同じホンダRS125ながら、サスもタイヤも、違うメーカーのものを使っての出場や、度重なる日本とヨーロッパの往復、そして始めての海外生活と、14歳の少年には厳しすぎる面が多すぎたようです。
しかし、見事に全日本選手権GP125クラスで全勝し、史上最年少のチャンピオンとなりました。
とは言うものの、「好事、魔多し」を絵に書いたように、チェッカード・フラッグを受けた直後に追突され、あまり良い事が無かったスペイン選手権最終の2戦に出場して、雪辱を果たす事も出来ず、シーズンを終えてしまいました。
出場したスペイン選手権全てと、全日本の何戦かを見守ってきましたが、日頃と変わらないように振る舞い、懸命に結果を出そうとする真摯な態度とは裏腹に、その表情は全くと言ってよいほど違ってきていました。
出場して何とか雪辱を果たしたかったスペイン選手権最終戦を、静かにコース・サイドから見つめる中上少年の姿の何と痛々しかった事か。
しかし、今日会った中上少年は、大きく変わっていました。
MotoGPアカデミーの2年目の在籍が許可され、長期トレーニングなどを行い、エンジニアやメカニックとの英語でのやり取りも一人でこなせるようになっていて、昨年と比べると一回りも二回りも大きく成長したようです。
その上、MotoGPアカデミーのアルベルト・プーチ氏や、運営しているDORNAの重役であるマネル・アロヨ氏の強い要望と、全日本選手権で所属していたハルクプロを主催する本田重樹社長の英断、加えて、HRCの好意的なサポートもあり、今シーズンはスペイン選手権に専念出来る事になり、精神的にも大きな余裕となり、表情も生き生きしていました。
今回は、MotoGPの行われるバルセロナ郊外にあるカタルニア・サーキットで行われる、カタルニアの地方選手権に練習がてら出場した、との事です。MotoGPアカデミーから3人が出場、土曜日の予選は、1回目が雨、2回目がドライだったそうですが、中上少年は、2位と1位で通過、ポール・ポジションからのスタートとなりました。
しかし、海外初優勝はお預けとなり、ほろ苦い2位表彰台となりました。
「人間万事塞翁が馬」の故事のごとく、一つ一つの事に一喜一憂せず、自らの目標に向かって、真摯に、着実に歩く事が大切なのだと、ホンダとそれを取り巻く人達が育てている多くの若者の代表とも言える、この2人の若者の歩みを見守りながら、今さら自らに言い聞かせている今日この頃です。
窓の外は、再び厚くなってきた雲が太陽を遮っているものの、昨日までの冷たい雨の降るスペインとは思えない気候から、春の気配を感じられるようになってきました。
明日は、朝6時の飛行機で、トルコGP開催地、イスタンブールに向かいます。
今年は、例年になくいろいろと面白そうで、このページもなるべくマメに更新するつもりですので、よろしくお願いします。
クドいようではありますが、「グランプリ・イラストレイテッド年鑑」の2006年版の購入も、併せて、是非よろしくお願い致します。